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ゼロカーボンとは・意味

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ゼロカーボンとは?

ゼロカーボンとは、企業や家庭が排出する二酸化炭素をはじめとする温室効果ガス(カーボン)の排出量から、植林や森林管理などによる吸収量を差し引き、排出量の合計を実質的にゼロにすることを意味する。カーボンニュートラルネットゼロとほぼ同義であり、国際的にはネットゼロ(Net Zero)という表現が一般的に用いられている。

近年では、単なるバランスの達成ではなく、温室効果ガス排出の絶対量削減と、除去技術の拡大が同時に求められており、ゼロカーボンは社会・経済全体の構造転換を含む包括的な気候変動対策の柱とされている。

ゼロカーボンの背景

地球規模の課題である気候変動問題の解決に向けて、2015年に196の国と地域によってパリ協定が採択された。​この協定では、世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力を追求すること、また今世紀後半に温室効果ガスの人為的な排出量と吸収量との間の均衡を達成することが合意された。​

2023年に発表されたIPCC第六次評価報告書(AR6)によれば、人間活動による地球温暖化は、2011年から2020年の平均で産業革命以前(1850~1900年)に比べて約1.1℃上昇しており、温暖化の速度は過去よりも速まっているとされる。​特に2014年から2023年の間では、温暖化の速度が10年あたり約0.26℃に達していると報告されている。 ​

また、NASAの分析によれば、2023年の地球の平均気温は産業革命以前に比べて約1.4℃上昇しており、観測史上最も高い気温を記録した。 ​
NASA

これらのデータは、気候変動が予想以上の速さで進行していることを示しており、各国が「2050年ゼロカーボン」に向けた取り組みを加速させる必要性を強調している。

ゼロカーボンの必要性

ゼロカーボンの必要性を理解するには、気候変動と地球温暖化の現状、そしてそれに伴うリスクを把握することが不可欠である。​

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第6次評価報告書(AR6)によれば、2011年から2020年の平均気温は、産業革命以前(1850~1900年)に比べて約1.1℃上昇している。​さらに、2023年には地球の平均気温が産業革命以前より約1.45℃高くなり、観測史上最も高い気温を記録した。 ​
japan.iclei.org

また、2014年から2023年の間に、人為的な地球温暖化の速度は10年あたり約0.26℃に達しており、これは観測史上最も速いペースである。

世界の年平均気温偏差

世界の年平均気温偏差 出典:気象庁

これらの気温上昇は、地域によっては平均を上回る温暖化を引き起こしている。​特に陸地や高緯度地域では、海洋よりも顕著な気温上昇が観測されている。​このような地域的な差異は、極端な気象現象の発生頻度や強度の増加につながっている。​

IPCCの報告によると、産業革命前に50年に1度しか起きなかったレベルの極端な高温は、世界平均気温が既に1℃温暖化した現在では約4.8倍の頻度で生じており、温暖化が1.5℃まで進めば約8.6倍、2℃まで進めば約13.9倍の頻度で発生すると評価されている。 ​

これらの変化は、高潮や沿岸部の洪水、海面上昇による健康障害や生計崩壊のリスク、大都市部への内水氾濫による人々の健康障害や生計崩壊のリスク、極端な気象現象によるインフラ機能停止、熱波による死亡や疾病、気温上昇や干ばつによる食料不足や食料安全保障の問題、水資源不足と農業生産減少、陸域や淡水の生態系、生物多様性がもたらす、さまざまなサービス損失、同じく海域の生態系、生物多様性への影響など、多岐にわたるリスクを引き起こす可能性がある。​

温室効果ガスの排出量がこのまま増え続ければ、地球の自然環境は大きく損なわれることになり、仮に気温上昇を1.5℃に抑えられても、ある程度の影響を受けることになると予想されている。​したがって、ゼロカーボンの実現は、これらのリスクを軽減し、持続可能な社会を構築するために不可欠である。

ゼロカーボンに向けた取り組み

では、具体的にはどのような方法でゼロカーボンを達成できるのだろうか。以下はその例だ。

カーボンオフセットとJ-クレジット制度

カーボンオフセットとは、日常生活や経済活動において避けることができないCO2等の温室効果ガスの排出について、できるだけ排出量が減るよう削減努力を行ったうえで、どうしても排出される温室効果ガスについて、排出量に見合った温室効果ガスの削減活動に投資すること等により、排出される温室効果ガスを埋め合わせる方法である。​

日本では、カーボンオフセットに用いる温室効果ガスの排出削減量・吸収量を信頼性のあるものとするため、国内の排出削減活動や森林整備によって生じた排出削減・吸収量を認証する「オフセット・クレジット(J-VER)制度」を2008年11月に創設し、2013年度からは、J-VER制度及び国内クレジット制度が発展的に統合したJ-クレジット制度が開始されている。​

2025年1月時点で、国内のJ-クレジットの取引高は約73万t-CO2となっている。クレジットの価格は、再生可能エネルギー由来で1トンあたり約6,500円、森林由来で約6,500円、エネルギー効率改善由来で約3,950円とされている。

再生可能エネルギー

日本の再生可能エネルギー導入は着実に進展している。​2023年度の発電電力量における再生可能エネルギーの比率は25.7%に達し、前年の22.7%から増加した。​政府は2030年度までに再生可能エネルギーの比率を36~38%に引き上げることを目標としている。 ​

また、2023年度には再生可能エネルギーが電力供給の22.9%を占め、前年から1.1ポイント増加した。​原子力発電も8.5%に増加し、化石燃料の割合は68.6%に減少した。

国際的な動向

アメリカでは、トランプ政権下の2017年にパリ協定からの離脱が表明され、2020年に正式に脱退したが、その後2021年1月にバイデン大統領が就任すると直ちに協定に復帰した。​しかし、2025年1月にトランプ氏が再び大統領に就任し、就任初日に大統領令14162号を発令して再度パリ協定からの離脱を表明した。​この大統領令は、国際的な環境協定におけるアメリカの関与を最小限に抑えることを目的としており、国際気候資金の拠出停止や関連政策の見直しが指示された。 ​

このようなアメリカの動きに対し、他国は独自の気候変動対策を強化している。​カナダでは、2024年に元イングランド銀行総裁のマーク・カーニー氏が首相に就任し、気候変動対策を経済政策の中心に据えている。​また、メキシコでは2024年に気候科学者であるクラウディア・シェインバウム氏が大統領に就任し、環境政策を積極的に推進している。

欧州連合(EU)は、2030年までに温室効果ガス排出を1990年比で少なくとも55%削減する「Fit for 55」政策パッケージを継続しており、2025年から2027年にかけてはLIFEプログラムを通じて、循環経済、ゼロ汚染、生物多様性、気候変動緩和と適応、クリーンエネルギーなどの分野に23億ユーロ超の予算を投じる方針である。

【参照サイト】Global Warming of 1.5 ºC(IPCC)
【参照サイト】IPCC第6次評価報告書で明らかになった気候科学の最新知見(国立環境研究所・江守正多
【参照サイト】世界の年平均気温偏差の経年変化(1891〜2021年)
【参照サイト】地球温暖化が進むとどうなる?その影響は?(WWF JAPAN)
【参照サイト】カーボンニュートラルとは
【参照サイト】地球温暖化による世界の気温上昇、「1.5℃」と「2℃」では大きな差(WORLD ECONOMIC FORUM)
【参照サイト】ゼロカーボンとは|世界的な推進による影響・取り組む企業の事例

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